2121富山流『くすりのスペシャリスト』である本学薬学部卒業生は、いずれもそれぞれの職場でその「研究者魂」をいかんなく発揮し、高い評価を受けて活躍しています。岐阜薬科大学薬学部 副学長兼教授 五十里 彰(H6卒業?H8修士?H11博士) 私は富山で生まれ育ち、富山医科薬科大学(現在の富山大学)で学位を取得後、静岡県立大学薬学部の教員になりました。薬学部に入学した頃は、薬剤師の道しか知らず、製薬企業、大学、研究所、行政機関など、多くの活躍の場があることを知って進路に迷うこともありましたが、熱心にご指導いただいた先生方の姿を見て、研究を続けたい思いと薬学教育に携わりたい思いが強くなり、大学教員としての道を選びました。 現在、私は岐阜薬科大学の生化学研究室で、がんの新しい治療標的の同定と治療薬の開発を目指して研究に取り組んでいます。大学では、すぐには役に立たないような基礎研究から医療現場に密着した臨床研究まで、幅広い研究を実施することが可能です。なかなか期待する結果が得られませんが、思いがけない発見に遭遇することがあります。このように探しているものとは別の価値あるものを見つける能力を“セレンディピティ”と呼びます。セレンディピティを高めるためには、幅広い知識と経験が必要なため、学生とともに日々勉強の毎日です。薬学を志す皆さんがこれからどのような職業を選ぶにしても、失敗を恐れず新しいことに挑戦し、多くの経験を積んで欲しいと思います。 私は、富山医科薬科大学(現 富山大学)で学位を取得後、11年間富山大学薬学部の教員として勤務しました。現在は、高崎健康福祉大学薬学部で主に病態や薬物治療に関連した教育活動に従事するとともに、分子神経科学研究室を立ち上げ、これまでの経験を生かしながら新たな気持ちで研究に取り組んでいます。 私の研究のテーマは、「神経系遺伝子発現の制御機構の解明および創薬への応用」です。記憶などの高次脳機能の発揮に必要なタンパク質の発現がどのように制御されるのかを明らかにし、得られた研究成果に基づいて、うつ病や認知症など近年患者数の増加が問題視されている神経?精神疾患の治療薬や予防薬開発を目指しています。また、これら研究活動を通した教育指導により、自ら考える力や高い志を持つ学生の育成にも取り組もうと日々努力をしています。 私自身、学生時代にはあまり感じませんでしたが、今になってみると大学生活は本当に短かったと痛感しています。ぜひ、「大学生の時にしかできないこと」や「富山大学でしかできないこと」を探して、在学中にできるだけチャレンジしてください!富山大学薬学部から多くの人財が輩出されることを祈っています。 私は、富山医科薬科大学(現?富山大学)の博士前期課程(修士)を修了後に臨床開発職で製薬会社に入社し、以来ずっとこの仕事に携わっています。臨床開発は、細胞や動物レベルでの非臨床試験から期待されるくすりなどの候補化合物の有効性や安全性が実際に人でも認められるかを臨床試高崎健康福祉大学薬学部 教授 福地 守(H13卒業?H15修士?H18博士)MSD株式会社 高瀨 明子(H10卒業?H12修士)験(治験)で確認する、医薬品/ワクチンの研究?開発の最終段階を担当します。仕事の内容は多岐にわたり、私の場合は、開発戦略の検討、第Ⅰ相から第Ⅲ相にわたる治験の計画立案や実施、治験実施医療機関との対応、申請資料作成、厚生労働省やPMDAによる審査の対応など、幅広く経験してまいりました。多くのメンバーから成るチームで「1日でも早く新薬を患者さんに届ける」というゴールに向かって日々取り組んでいます。自分が関わった新薬によって患者さんの救命に繋がることもあり、とても大きなやりがいを感じられる仕事です。 「くすりの富山」の地で薬学の基礎を学び、研究室生活を送り、競技スキー部で薬学?医学?看護の仲間と共に活動したことのすべてが今の私の貴重な財産となっています。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 再生医療製品等審査部栗林 亮佑(H15卒業?H17修士?H28博士)私は、現在、バイオ医薬品の品質審査業務、バイオ後続品の承認審査業務と国際業務に携わっています。また、バイオ後続品の承認審査では、品質、非臨床、臨床での先行バイオ医薬品との比較等を通じて、先行バイオ医薬品との同等性/同質性が示されているかを審査しています。国際業務では、医薬品規制調和国際会議(ICH)に参加しています。このICH会議での活動を通じて、製薬企業の医薬品開発の効率化につなげられればと考えています。どの業務も国民の健康増進につながる仕事であるため、大変やりがいのある仕事であると感じています。富山大学薬学部では基礎から臨床まで様々な薬学の世界を勉強?経験することができます。その中から、自分の興味のある進路?分野に挑戦し、自分自身の新たなフィールドを創っていってください。薬学部の卒業生はど武田薬品工業株式会社 医薬研究本部 清水 久夫(H15卒業?H17修士?H20博士) 私は製薬企業で研究職として働いています。現在勤務している製薬企業では、画期的新薬を患者さんに届けるという共通の目標のもと、グローバル規模で新薬の研究開発に取り組んでいます。新薬の開発は、ターゲット探索、化学合成、薬効評価、毒性評価、薬物動態評価、製剤設計、そして臨床試験と多くの時間と労力がかかる非常に困難なミッションです。私はその中でも薬物動態を評価する研究に従事しており、現在、主に血中の薬物濃度を分析する仕事に携わっています。研究所では日々新しい候補化合物が見出されますが、候補化合物は低分子化合物から核酸?ペプチドなどの高分子化合物まで多岐に渡ります。さらに薬物本体のみならず代謝物やバイオマーカー等も高感度に分析することが求められます。私はそれら化合物の特性を見極めた分析法を開発することで、新薬の開発に貢献するやりがいを感じています。私は学部?大学院を通して富山大学で学びましたが、社会に出た現在、大学で得た専門知識や経験が自分の科学者としての重要な土台になっていると実感しています。バイオ医薬品の品質審査では、製薬企業が提出する品質の結果が主な審査内容になります。品質の審査では、バイオ医薬品の作り方(製造方法)の確認から、製造された医薬品が予め設定された管理項目(規格)に適合するか、臨床現場での使用にあたって貯蔵方法(例:2?8℃で保存)や有効期間を検討する安定性について審査を行っています。大学で学生と共に新薬開発を目指す大学での研究活動による社会貢献および教育活動による人財育成製薬会社で臨床開発業務に携わる製薬企業で研究職として働く審査する行政機関では富山流「くすりのスペシャリスト」へのインタビュー
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