これらの研究紹介記事は以下の授業で作成したものです。「科学コミュニケーションII」主 講師:元村有希子(同志社大学 生命医科学部 特別客員教授)担当教員:川部達哉(数学プログラム)、島田 亙(自然環境科学プログラム)立山のライチョウ峯村さん撮影峯村さん撮影研究者レポート分析を行い、実際にどのような節足動物をどのくらい食べているかを調べている。今後の研究によって、ライチョウの保全に役立つ興味深い知見が増えることが楽しみだ。Q:博士課程にどうして進んだのですか? ライチョウの研究をしたいと思って研究室を探しているときに、和田先生に「ライチョウの餌資源の研究ができるよ」と言われたことがきっかけで始めたのですが、修士課程まででは納得いくまでやり遂げることができず、「自分の研究を一区切りつくまでは続けたい」と、博士課程に進みました。Q:研究をやっていて面白いこと、辛いことはありますか? 研究室でドローンを使って調査をするのですが、自分自身で使いこなせたときやGIS(地理情報システム)の使い方のテクニックを学べたときはとても楽しいですね。学んだことを実際に使えるのは研究の醍醐味です。また、その調査で得た情報が世界中で自分しか知らないという状況も楽しいです。そのほかにも、後輩に技術指導できた時は、これまでの頑張りを実感できる瞬間です。 つらいことは、野外調査のサンプル処理など、時間に追われる作業が大変です。また、立山での調査は何回もできるわけではないので1回1回の調査がプレッシャーです。しんどいことがあってやる気がなくなったときは、セブンイレブンでコーヒーを買って神通川の河川敷で疲れをいやしています。野外調査で節足動物を探す峯村さんインタビュアー神谷 海知、齊藤 千晴、塩原 颯人、山澤 泰峯村さんに研究生活について質問してみました。28大学院 理工学教育部 博士課程地球生命環境科学専攻3年生(富山大学SPRINGスカラシップ研究学生)出身地:長野市趣味:登山、植物を育てること、写真撮影 富山でお馴染みの鳥「ライチョウ」。国の特別天然記念物にも指定されている希少動物である。高山帯に属する立山は日本で最もライチョウの生息密度が高く、注目すべき特殊な環境といえる。絶滅危惧ⅠB類であるライチョウは保全の必要性が高い動物だが、その生態は未解明な部分も多い。そんなライチョウの 生 態に迫るため、峯村さんは高山の生態系を扱う和 田 直 也 教 授の研 究室に所 属し、ライチョウを取り巻く環境について調べている。 残雪に覆われる春の立山で、ライチョウは繁殖期に必要な栄養をどのように獲得しているのか? ライチョウは植物を主食とする一方、アブラムシなどの節足動物も食べることがある。特に雪が多く残る産卵期前には、節足動物を好んで食べることが知られている。これによって、ライチョウは産卵に必要な栄養を獲得しているのではないか、と峯村さんは考えた。 そこで、産卵期を含む春から夏にかけて峯村さんは立山のライチョウの生息場所に通い、雪上でみられる節足動物を地道に採取し、その種類や量からライチョウの繁殖との関係を調査した。その結果、節足動物量はライチョウの産卵開始時期に特に多くなるという季節変動が明らかになった。 次に、これらの節足動物がどこから来たのかを調べた。採取された節足動物の生態から、それらが周囲の山地帯から上昇気流に乗って移入してきていると考えられた。 このようにして、高山帯の外から供給される豊富な節足動物が、ライチョウの産卵開始を決める要因のひとつになっているという仮説を峯村さんは証明しようとしている。博士課程に進学した現在は、ライチョウの糞のDNA学生による学生のための 研究者レポート 理学部の若き研究者たちの最新情報を公開このページでは、学生が先輩たちにインタビューし、研究内容を分かりやすく紹介します。ライチョウ LOVEライチョウとは研究内容峯村 友都(みねむら ゆうと)
元のページ ../index.html#29