TOPICS

内臓脂肪と肝臓の新規臓器連関の発見:未病因子CD52が肥満による肝疾患と糖尿病を防御する

ポイント

  • 肥満マウスにおいて内臓脂肪のTリンパ球からCD52※1)が放出され、肝臓の慢性炎症を抑制することで肥満による肝疾患を防止する新機構を明らかにしました。
  • CD52欠損マウスではこの防御機構が存在しないため、肥満に伴う肝疾患と糖尿病の病態悪化を示しました。
  • CD52は未病因子として見出されたことから、これらの成果は肥満による肝疾患と糖尿病の新たな予防と治療戦略につながるだけでなく、未病創薬への展開が期待されます。

概要

 国立大学法人富山大学学術研究部 薬学?和漢系の和田努(わだ つとむ)講師、宮澤佑一朗(みやざわ ゆういちろう)大学院生、岩佐雄一(いわさ ゆういち)大学院生、笹岡利安(ささおか としやす)教授らは、未病因子であるCD52を欠損するマウスに高脂肪食を給餌して肥満を誘導した際に、正常マウスと比較して肥満の程度は変わらないにもかかわらず、肝臓の慢性炎症の増悪により糖尿病の病態が悪化することを見出しました。その機序として、肥満病態では内臓脂肪組織のTリンパ球活性化に伴いCD52が可溶化して放出され、血流を介して肝臓に至る臓器間の連携による新たな慢性炎症の防御機構が明らかになりました。本知見は肝疾患の新たな予防と治療戦略の開発への貢献が期待されるだけでなく、未病創薬の可能性を示す研究成果と考えられます。
 本研究成果は、医学?生物学専門誌「Molecular Metabolism」に2025年11月15日(土)(日本時間)に掲載されました。

用語解説

※1)CD52
免疫細胞の細胞表面に発現する糖タンパク。CD52 に対する抗体のアレムツマブは、慢性リンパ性白血病に対して治療薬として使用されている。また基礎研究において、CD52 は自己免疫応答の制御によりI 型糖尿病の発症に重要な膵臓の炎症(自己免疫性膵島炎)の抑制に関連することが報告されている。

研究内容の詳細

内臓脂肪と肝臓の新規臓器連関の発見:未病因子CD52が肥満による肝疾患と糖尿病を防御する[PDF, 431KB]

論文情報

論文名

Protective role of soluble CD52 in obesity-associated steatotic liver disease and glucose dysregulation in mice.

著者

Yuichiro Miyazawa§, Tsutomu Wada§*, Yuichi Iwasa§, Kento Fuse, Hisafumi Shioneri,Yasuhiro Onogi, Azusa Sameshima, Tomoyuki Yoshida, Ichiro Takasaki, Hisashi Mori,Keiichi Koizumi, Hiroshi Tsuneki, Shigeru Saito, Toshiyasu Sasaoka*
§ 共同第一著者、* 責任著者

掲載誌

Molecular Metabolism

DOI

https://doi.org/10.1016/j.molmet.2025.102279

お問い合わせ

富山大学学術研究部薬学?和漢系
講師 和田 努

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