シロアリの社会性の起源とカースト経路の多様化を支えるゲノムの特徴を解明
発表のポイント
- シロアリのゲノム上で重複する遺伝子は,単一コピーの遺伝子よりもカースト特異的な発現を示すことがわかり,遺伝子重複による機能分化が社会性の進化に重要だったとの仮説を強く支持しました。
- シロアリに最も近縁なキゴキブリのゲノムと比較することで,シロアリのゲノムで特異的に重複した遺伝子群を特定し,生殖や形態形成に関係する遺伝子が多く含まれることを明らかにしました。
- カースト分化経路が異なる2種のシロアリでは,カーストと性別の網羅的な遺伝子発現パターンが顕著に異なり,特に性決定遺伝子Doublesexの発現調節に違いがあることが示唆されました。
概要
富山大学学術研究部理学系の前川清人准教授と大学院理工学教育部の藤原克斗氏(現 産業技術総合研究所バイオものづくり研究センター博士研究員)らの研究グループは,慶應義塾大学の林良信講師,国立遺伝学研究所の豊田敦特任教授,玉川大学の宮崎智史教授,シドニー大学のNathan Lo教授らと共同で,シロアリの社会性の進化をもたらしたゲノム上の変化を突き止めました。研究グループは,次世代DNAシーケンサー(大規模塩基配列解読装置)を用いて高精度なゲノム情報を解読し,網羅的な遺伝子発現解析を行うことで,ゴキブリ様の祖先群から進化した際に遺伝子重複が重要だったことと,シロアリのカースト分化経路が多様化した際に発現パターンの顕著な変化があったことを明らかにしました。
本研究成果は,「Molecular Biology and Evolution」に2025年11月3日(月)(日本時間)に掲載されました。

研究内容の詳細
シロアリの社会性の起源とカースト経路の多様化を支えるゲノムの特徴を解明[PDF, 1MB]
論文情報
論文名
Genomic features underlying the origin of sociality and the diversification of caste systems in termites
著者
藤原克斗1, 岡昂輝1, 芦原流聖1,宮崎智史2,豊田敦3,Nathan Lo4,*林良信5,*前川清人6
1.富山大学大学院理工学教育部,2.玉川大学農学部,3.国立遺伝学研究所,4.シドニー大学生物科学部,5.慶應義塾大学法学部,6.富山大学学術研究部理学系,*責任著者
掲載誌
Molecular Biology and Evolution, Volume 42, Issue 11, msaf284
DOI
https://doi.org/10.1093/molbev/msaf284
お問い合わせ
富山大学学術研究部理学系
准教授 前川 清人
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